小学校高学年の総合学習に演劇を取り入れたいと考えていた私が、即興表現(インプロ)を演劇の世界の枠を越えて広めようとしていた吉田敦さんに出会ったのが平成14年2月。意気投合した私たちのプロジェクトはトントン拍子に進み、一年後の今では、14回の授業を経験した85名の子どもたちにとって「即興」は、日常生活の一部になりました。
この一年間で、子どもたちが即興から影響を受けたことはたくさんありますが、一番大きかったのは、毎月の授業の最初に吉田さんが子どもたちと確認する「人のアイデアを否定しない」という即興の唯一のルールが作り出す解放感、安心感を感じたことではないでしょうか?
小学生たちは、学校生活の中で、いわゆる「勉強のできる子」や「リーダーシップを取れる子」は、日常的にのびのびと自己表現をしていますが、そうでない子どもたちは、自己表現をすることをためらう場面が大変多く見られます。
「こんなことを言ったら、友達に笑われないかな?」
「こんな考えは、先生にダメって言われないかな?」
「この意見、まちがっているんじゃないかな?」・・・と。 |
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しかし、即興表現の授業では、全てのアイデアが否定されません。否定されないどころか、自分が言った「ことば」や、自分が演じた「動き」が、次の表現に活かされていきます。どんな表現をしてもOKという解放感、安心感の中で、子どもたちは、受け入れられる喜び、表現する楽しさを毎月体験してきているのです。
開始当初は、即興を苦痛に感じている子たちも見受けられました。授業中、何らかの表現をしなくてはなりません。普段の授業のように苦手だから傍観しているということもできません。表現を否定された経験の多い子にとっては、最初はつらい時間だったようです。でも、今では、ほぼ全員の子が自分なりの表現を楽しむことができるようになっています。
「6年生で演劇活動をするための前段階としての表現力の育成」という当初の目的が充分達成されただけでなく、子どもたちは日常の学校生活の中でも、人のアイデアを否定せず受け入れる気持ちを意識できるようになり、同時に、表現することを楽しむようになりました。その変化は、まさに「即興の力」がもたらしたものです。
即興表現の授業は、演劇の枠を越えて、池の上小学校の子どもたちに「いきいきとした表現力」と「互いの存在を尊重する心」を育んでいます。
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